2007年4月30日月曜日

NEC PC-9801 (昭和57年10月発表)

昨日に引き続き、昭和の薫りがするもの。



今日は、大学生のとき、タダでもらった、こんなもの・・・



日本電気 PC-9801
昭和57年(1982年)10月発表



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ペタペタはられているシールが痛々しいです。黄色と赤のシールは、「'96秋の菓子まつり ヤマザキ」。NEWSというのは、昔あった、ソニーのワークステーションNEWS(後にプレイステーションとして結実しました・・・もちろん冗談ですが、それほどまったくのウソでもないらしい)。そのとなりは、カワウソ君です。



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Vというシールが貼ってあるのは、CPUをNECのV30に差し替えてあるので、かっこつけただけ。オリジナルの仕様では、intelの8086 5MHzでしたが、8086互換なCPUであるV30に換装すると、若干速くなるので、当時、よくやられていたことみたいです。たしかV30は、アキバで買ってきてもらって、1500円くらいだったように記憶しています。



大学2年くらいのとき(ちなみに平成の時代の話です)、プログラミングの実習とか始まりましたが(Pascalとかでした・・・笑)、そのころまともに使えるパソコンを持っていなくて、うちにあればいいのになぁ、と思っていたところ、当時すでに性能的に使い物にならないガラクタだった、PC-9801、8インチフロッピーディスクドライブ、ディスプレイなど一式をタダでもらってきました。



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裏側



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消費電力が70W(最大140W)と、今時のパソコンでは考えられない低さ。
処理性能も、考えられないほど低いですけど。

丸いコネクタが、8インチフロッピーディスク用の電源で、たぶん昔、そういうドライブがあったんでしょう。よく知りません。



ディスプレイのコネクタが、デジタルRGB用、モノクロ用、2つあります。昔はカラーディスプレイが高くて、モノクロディスプレイが使われてたことも多かったみたいです。このコネクタも、ずいぶん前に使われなくなってしまいました。



ところで、今の時代で、デジタルっていうと「いいもの」のように思われますが、このデジタルRGBは、8色しか色が表示できない規格で、その後使われるようになった、もっとたくさんの色数を使える「アナログRGB」(今でも使われている)のほうが、「いいもの」です。



5インチフロッピーディスクドライブ用のコネクタが生えていますが、2Dという320KBの規格のドライブ用だと思います。



このあたりのインターフェイスは、たぶん、当時のPC-8801とかで使われていた周辺機器をそのまま使えるように考慮されていたんじゃないかと思われます。



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拡張スロットが6個ありますが、1枚は、最初から埋まっていたと思います。



RS-232C、プリンタ、このコネクタは、その後もず~とこの形のままでした。RS-232Cのコネクタが、DSUB25ピンで、これが、IBM PC/AT互換機のプリンタと同じものでして、しかし、電圧のレベルが、RS-232Cは12ボルト、プリンタのパラレルポートは5ボルトということで、まちがえて挿すと故障する危険性があります。PC9801とAT互換機が共存していた時代。



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DIPスイッチ。そういえば、最近のパソコンでは、ほとんど見かけなくなってしまいました。ソフトウェア的にやるようになっちゃいましたので。



拡張ボード上の、林立するパスコン(バイパス・コンデンサ。ICの電源線にノイズがのるのを防ぐ部品)も、今では見かけないですね。



8インチフロッピーディスク用のインターフェイスは、後の5インチ/3.5インチの2HDフロッピーディスクドライブ(容量1.4MB)と共通です。



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増設メモリ。メインメモリを、外部拡張用のバス経由で接続するなんていうアーキテクチャは、今の常識からはまったく考えられない仕事でございますです(笑)。
これで、容量が256KBかな?
写真右下側の領域に、64kbit DRAMが、タテ9個、横4列なので、1bitパリティつきで256KBですね。もともと本体には128KBを標準搭載だったそうで、フル実装時の容量は640KBです。
(注: 単位のはKBはキロバイトです。念のため。わかりやすく言えば、300万画素程度のデジカメで撮影した写真1枚のファイルサイズでも、たいてい640KBくらいはあります)。



パリティビットなんか使ってたのは、私の想像ですが、当時のハードウェアの信頼性が低くて、どうしても必要だったんじゃないか?と思うのですがどうなんでしょう。たまに、PARITY ERRORというエラーメッセージがでたのを見たことがありました。でもたったの1ビットなので、1bitエラー検出しかできません。
ちなみに、ワークステーションでは、32bitワードに4bitの冗長ビットを増やして、1bitエラー訂正、2bitエラー検出とするのが、常套手段だったようなきがします。
もう1つおまけ。PC-9801では、メモリが2バンクインターリーブ構成になっていて、メモリアクセスのレイテンシーをできるだけ隠そうとするアーキテクチャになっていました。そういう工夫ってのは、最近でてきたわけじゃなくて、PC-9801よりももっと前の大昔からあったんだよ、ってことで。



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拡張スロットの右下には「R」という印がついていて、そこに刺さっていたボード。これは、N88-BASIC(98)のROMだったと聞いています。銀色のシールが貼ってあるので、紫外線で消去可能なEPROMだと思います。要するに、発売直前まで、いや出荷開始後も、ソフトウェアのデバッグが続いていたというわけですか?



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CMTインターフェースボード。CMTってのは、カセット・マグネティック・テープ、ようするにカセットテープのことです。フロッピーディスクよりも前に、オーディオ用カセットテープを使って、プログラムやデータを音として記録していました。
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ボードの裏には、ジャンパ線が! そういえば、最近、ジャンパ線のあるボードって見なくなりましたね。チップの集積度があがったために、ジャンパなんかで修正できるようなもんではない、とか、ソフトウェア的になんとか対処できるように作られているとか、そういうことだと思います。
このPC-9801の中を見ていると、74シリーズのICだらけですから・・・ようするに、インバータやNANDなど、ゲートレベルで設計されてたわけなんですから、もう時代が全然違います。



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CPUは、V30に交換しました。微妙に速くなりました。1~2割くらいかな。



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8255。汎用パラレルI/O用のチップで、たぶん、プリンタインタフェースなんかでよく使われたんじゃないかと思います。



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8251。シリアルI/Oのチップ。UARTっていうべきなのかな。RS-232Cとかで使われます。



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D7220。グラフィック・ディスプレイ・コントローラ、通称GDC。後のPC-9801では、機能向上版のEGCというのも使われました。
テキスト文字を表示したり(アルファベットだけでなく、とても高速に漢字も表示できた)、グラフィックを描画したり(円を描く命令とかあった)、PC-9801をPC9801たらしめた、特徴的なチップの1つだと思います。
写真。なんか、錆びてます・・・



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ふたを開けたところ。写真上が、前面側。
左側が電源。
右下の四角のところが、拡張スロット。
その上が、ボードが2階建てになっていて、2階のボードが、たぶん、グラフィック関係のボード。
さらにその上、最前面に、垂直に刺さっているボードがあり、これ、たぶん、マスクROMみたいのが並んでいたので、漢字ROMでしょうか。
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2階のボードをめくったところ。CPUとかが見えるようになります。空きソケットがありましたが、これってもしかして8087数値演算コプロセッサのソケットかも。
めくられたボードには、DRAM、TTC IC、GDCが載っていて、裏にはジャンパ線がありました。





こうして今PC-9801の中を見てみると、チップの個数が多すぎ、(ゲート)密度が低すぎ、とか思ってしまいます。これだと、製造するのも手間がかかるし、それだけ不良品率も増えるだろうし、昔のパソコンは高かった(うん十万円)のも、なんとなく納得できます。



もう1つ思ったのが、チップのパッケージが、ぜんぶDIP(デュアル・インライン・パッケージ)なんですね。「ゲジゲジ」と呼ばれた、典型的なICの形で、ある程度の年代以上の一般の人も、ICやLSI、集積回路全般に対して思い浮かぶのは、この形なんじゃないでしょうか。



でも、DIPなんて、今ではほとんど使われないですね。チップの集積度が増えて、たくさんの機能を1チップに詰め込めるようになると、チップ内部と外とをつなぐ端子の数が増えるのですが、DIPだと、ぜんぜん端子の個数を増やせないんですね。



だから、マンガやアニメなんかででてくるシーンで、最新で高性能な電子機器を表現するための描写として、あのゲジゲジ型の半導体チップを描いてしまうと、
「んなわけねーよ!」
「いったいいつの時代の資料を見て、絵を描いてるんだよ」
とか感じてしまうわけです。
なんか最近も見かけたような・・・









その後も、PC-9801E、PC-9801F、PC-9801VMと、諸方面からタダでもらいつづけ、着実にステップアップを続けました。



しかし時代は80386 32bitの時代の幕開け。



PC-9801DAとかいう機種も登場し、OSも、Windows 3.0A(笑)なんてのが登場したりで(注:「笑」は、Windowsの名称の一部ではありません)、そろそろ自分でもPC-9801のどれかを買おうかなと思い出しもしましたが、回りを見渡せば、PC-9801シリーズだらけ。



じゃあ、わざわざ自分で買うこともないか、ということで、マックを買っちゃいましたとさ。



そのあとも、DOS/Vで十分じゃん、とかいうことになりまして、i486DX2 66MHzなPC互換機を購入。
だんだん自作とか楽しいね、とかなり、今に至る、と。



結局、PC-9801シリーズの機種は、1台も買いませんでした。




キーボードをどこにしまいこんだのだろう・・・見つからない。





(2007/5/8)



あのあと、ちょっと探したら、すぐ見つかりました。



Pc98kbd1




Pc98kbd2




Pc98kbd3



Pc98kbd4
初代PC-9801だけ、キーボードのコネクタが違っていました。初代のみ、みょぉ~に太いケーブル、でかいコネクタです。
初代PC-8801のときも、なんかの理由で、あわててキーボードと本体とを分離したデザインに変更したので、ケーブルがド太かったとかいう話をどっかで目にしたような・・・











(2009/03/04)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2009/0302/ipsj.htm
情報処理学会、「情報処理技術遺産」の認定式を開催
~NEC PC-9801をはじめ25件を認定

情報処理学会では、今回、認定した遺産と同種のものを所有している人は、それを認定遺産と同じと称することが可能としており、例えば、初代のPC-9801を所有している人は、それを「認定遺産と同じもの」と語ることができる。

だそうです。



同じもの![E:coldsweats01]



てゆうか、だから何なんだ、って感じ。



1 件のコメント:

  1. 高校生時代に去勢(CPU抜かれた)されたPC9801Mを貰った記憶があります。
    ジャンクのワープロから8086をハンダはずしして装着して動かしたのですが、RGB端子の規格があわなくて、しかもRGBの中に電源端子が混ざってる奴だったので青の信号が死んでしまったマシンでした。
    その当時はX1turboを愛用してました。
    FDのファイルフォーマットの互換性を持たせたOSを作ったりと、今では考えられない高等テクを駆使してたな・・・。
    今はもうヌルぽ・・・。
    ダンプ解析してコードを読むなんて出きる時代じゃないし・・・。
    既製品組み合わせて作った方が楽。
    便利になったけど、面白みがなくなったような気がします。

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